洋裁を覚えたての頃は、とにかくなんでも作りたかった。
伴わない技術に無謀な挑戦を幾重にも重ねてきました。
10年以上前に作ったこのライダースジャケットもその一つ。硬すぎて自立しています。
私の家庭用ミシン期の遺作です。



あこがれ異素材MIXとドロドロツイード
ライダース入門はしたいけど、ハードすぎるのも落ち着かない。
ソフトな生地を掛け合わせば自分にも着こなせるのでは、と考えたのが始まりでした。
一目惚れして買っておいたメーター4千円の贅沢なイタリアンツイード。この生地を使うタイミングがやっと来ました。
組み合わせる生地も同色系にしたくて行き着いたのが、ワッシャー加工されたプラチナホワイトの素敵なフェイクレザー。
絶妙な切り替えのライダースジャケットプランが完成しました。
しかし、ここでツイードの洗礼を受けてしまいます。
型紙通りに完璧に裁断したはずなのに、持ち上げた瞬間ドロッと形が崩れ、もはや何がどのパーツなのか、どこが上なのかすら分からなくなりました。
ツイードって恐ろしく繊細なのですね。
生地を抱え、数時間立ち尽くしました。
カチカチレザーとミシンの殉職
何とか活路を見出し、フェイクレザーと繋いだのですが、これがまた思った以上に硬い。
厚みが増すにつれ高まる緊張感。ミシンの悲鳴が聞こえてきそうです。
当時は生地の段差をうまくあしらうスキルも持ち合わせてなかったし、分厚くなるレザーを無理やり押さえ金にねじ込んでいたので、布は進まないのに、ミシンはコントロールを失い止まりません。
丁寧に入れたかったステッチは、点のように詰まり、車に轢かれた跡のようになってしまいました。

一度針を通せばやり直しがきかない素材なので、この時点で、袖を通すことに何の希望も持てなくなりましたが、とりあえず縫い上げます。
名前もよくわからない部品をコロリと落として、ミシンは動くことができなくなりました。
壊したからこそ手にした強力な貫通力
何とか直したいと必死で問い合わせをしました。
ところが、部品がどうやら廃盤のようで、修理不能との回答でした。
愛用していたミシンなだけに、かなり落胆しました。
確かに、自分のやりたいことの熱量と家庭用ミシンの限界とは、ギリギリのラインでいつもせめぎ合っていたと思います。
厚みのある生地を縫うことも多かったので、指先で日々そう感じていました。
この無茶なライダースを作らなければ、職業用ミシンを迎え入れる決断はまだまだ先だったかもしれません。
愛機の限界と引き換えに、どんな強情な素材も厭わない圧倒的な馬力に、夢を託すことに決めました。
10年後の答え合わせ
フェイクレザーを選んだのは、お手入れなどあまり気を遣わなくていいかなと思ったからでした。
10年経った今、襟やラペルなどの折り山が、ポロポロと剥がれ始めています。

私が着ているのか、ただ私が中にいるだけなのか、なんとも不思議な感覚にさせる堅牢なライダースジャケット。
活躍の場は少なかったですが、その時の私にとっては超大作なので、努力の結晶として大切に保管していました。
けれど、合皮の劣化には抗えないようです。
今目の前にあるジャケットは、言ってしまえば失敗作なのかもしれません。
でもこの一着が間違いなく、今の私の快適なミシンライフへの扉をこじ開けてくれたのでした。


劣化は進んだし記録に残せたし
思い残すことはないよ
10年越しの素敵な供養ですね
#洋裁 #大人カジュアル
